【秘本】5代目天狼院秘本

【5代目天狼院秘本】読み通すまでに3度泣き、静かに、1,000冊買い切る覚悟を決めた。

天狼院書店店主の三浦でございます。

今思えば、その本の原稿は、導かれるように東京天狼院のこたつの上に置かれました。
このときしかないタイミングで、僕の手に託されました。

そのとき僕は、11月16日から18日まで豊島公会堂の大ホールを借り切って開催する「天狼院の大文化祭」の準備に追われていました。そんな状況の中で、生まれたばかりの福岡天狼院の構築のために福岡に行っていて、一段落つき、羽田空港に降り立ったとき、「機内モード」を解除した瞬間に、おびただしい数のメールとメッセージが雪崩れ込んできました。

その中に、こんな主旨のメッセージがありました。

今、手元に原稿があって、どうしても僕に読んでほしい。それは文芸作品で、世の中に広げる方法を一緒に考えてほしい。

それは、もはや生ける伝説となりつつある、圧倒的な実績を持つ、スペシャルな編集者からのメッセージでした。

メッセージの中の、こんな一文がやけに心に引っかかりました。

「なんの手垢もついていない、作家のデビュー作です」

おかげさまで、近頃、超絶忙しくさせていただいていて、もはや、連日、ひどいときには朝の7時から深夜までアポや約束、仕事でいっぱいになっているのですが、スケジュールを無理くり調整して、すぐに会うことにしました。

何か、予感めいた、予兆めいた、おそらく、野生の直感的なものが作用したのだろうと思います。
会って、その原稿を読まねばならないと、焦燥のようなものを感じました。

東京天狼院のこたつで待っていた僕は、原稿を抱えてきた人の顔を見て、僕はある種、安堵を覚えました。

目がキラキラとして、自信に満ちているのです。
もう一刻もはやく読ませたいという想いが、全身の一挙手一投足からこちらに伝わるようで、これは、もしかして、とこの段階で僕は頭のなかで、ある仮説を走らせ始めました。

話を伺いながらも、この仮説を終始走らせることになります。
もちろん、読んでいる最中も。

その場で、冒頭を読ませて頂きました。

すぐに、引きこまれました。設定が、とてつもなくいい。
その設定が、クライマックス部分で炸裂するのではないかと、僕はわくわくしながら予測しました。

「とても、よさそうですね」

僕は、もはや、興奮を抑えきれずにそう言っていました。
そのとき、僕は翌朝まで読むことを約束して、大切な原稿を預かりました。

たしかに、僕は死ぬほど忙しい。
この原稿を読むには、一夜、丸々、睡眠時間を削らなければならない。

超絶多忙なこの時期に、限られた睡眠時間を削るのには、生命体として大きなリスクを抱えることになります。
正直言って、怖かった。

けれども、それ以上に、本屋としてこの本は、今、読まなければならないのだと、たとえば、消防士が家から上がる火の手を見て、飛び込まねばと思うのと、おそらく、同じような感覚で、たまたま通りかかった医師が、倒れた人を見て、手当しなければと思うような感覚で、いわば、「本屋のノブレス・オブリージュ」的な想いが、その原稿を前にした僕の中に、どうしようもなく、湧き上がってきたのです。

目の前に、予兆として輝きを放つような原稿がある。
僕が、どうにかしなければならない。
これは、僕の仕事である。

そう、自然と思うことができたのです。

正直、後は、ただ願うだけでした。

「狂おしいまでに、売りたいと思う本であれ」と。

一度、フロントライン(僕のオフィス)の机に広げて、読もうとしました。
けれども、連日の疲れが折り重なるように迫ってきて、深夜、頭が朦朧としてどうしようもない。

ただ、翌朝まで読み上げると約束したからには、これは守らなければならない。

仕方なく、僕は湯船にお湯を貯めました。
しかも、普段よりも熱めに設定し、お湯がいっぱいになると、湯船に蓋を敷いて、その上に原稿を持ち込んで、湯船に入り、原稿を読みました。
こうすれば、眠ることがなくなるからです。
原稿が濡れるといけないと思い、タオルを手元に置きました。

僕は、読み始めて、しばらくして舌打ちをしました。

文章が、頭に入ってこないのです。
おそらく、小説を初めて書いた著者だったので、冒頭、力みすぎたのではないでしょうか。説明が頭にすんなりとはなじまない。
改めて、糸井重里秘本の『骨風』は文章がうまかったのだなと思いました。

でも、せめて、複数の短編の中の1編だけでも読もう。
断るにしても、それが礼儀だと思って読み進めました。

すると、不思議なことが起きました。

はじめの方は、様々、設定の説明が必要で、登場人物の説明なども、わからなくなるのですが、ここを通り抜けてしまうと、物語の世界にすっと入り込めるようになる。
そして、後々に、冒頭で突っかかりながら頑張って読んだからこそ、後の感動が強いのだということがわかりました。
つまり、設定や登場人物は、すべて伏線であって、それぞれの話のクライマックス部分で、強靭にその伏線が回収されて行くのです。

極めて、なだらかに。
極めて、スピーディーに。
極めて、合理的に。

なにより、強烈な感動を伴って。

それがわかった瞬間、僕は強烈な嫉妬を覚えました。
素晴らしい作品を書く人間がまた現れてしまったと。

僕なんぞが逆立ちしても及ばない、極めて優れた作品が、目の前にあることを、認めざるを得ませんでした。

本を読むスピードは徐々に加速しました。
もう、眠気など、微塵も感じませんでした。

面白い。
非常に、面白い。
もう、やるせないほどに面白い。

2編目の途中で、僕は、もう号泣しました。

恥ずかしい話ですが、ひっくひっくとなるくらいに、泣きました。

原稿が涙で濡れてしまったので、手元においていたタオルで拭い取りました。

でも、僕は妙な安心感のもとに、読書を進めました。

なにせ、風呂に入っている。いくら泣いても大丈夫なのです。
そして、これ以降も、これ以上の感動の衝動が来るのだろうと、恐ろしくもそれ以上に楽しみに思いました。

いいのです。
本当に、いい。

人物がしっかりと描かれていて、彼らが作中で動くと、その中の世界がとても優しく清められるようで、もう涙が止まらなくなる。

わかったからもう、よしてくれ、泣かせないでくれと頼みたくなる。

結局は、愛なんだなと思いました。
終局的に、人間が共鳴できるのは、愛のみなのだと。

それが、臆面もなく、オーソドックスに、そしてまっすぐに描かれている。
ここまでまっすぐにそれをやられてしまうと、もはや、傑作と呼ばざるを得ない。

僕は遅読なので、読み終えるのに、数時間かかりました。
夜中、読み始めたのですが、浴室からでると、外はすっかり朝になっていました。

軽く体を拭いて、裸のままで、iPhoneを手にしました。
この原稿を託してくれた、編集者の方に、すぐに一報を入れました。

お待たせしました。
今、読み終えました。
5代目秘本、これでいきます。

思っていた仮説が、現実になる瞬間でした。
そして、その場で、こう伝えました。

「天狼院でこの本を1,000冊買い切ります」

静かに、当たり前のように、こう決意していました。
書籍は、正確にいうと、「返品条件付き買い切り商品」です。
つまり、「一旦は買い切って仕入れ代金を支払うが、同額で返品することができる」という不思議な商材。
けれども、僕は、この「返品条件」なしで、この本を買い切ることに決めました。

そのためには、新車1台分くらいの費用が必要になります。

それは、小さな天狼院にとっては、実に大きな冒険です。

なにせ、東京天狼院のすべての在庫が、4,000冊に過ぎないので、天狼院が1,000冊買い切ることがどれくらいのことなのか、想像頂けるかと思います。

一人でも多くのお客様に、この本を届けたい。

そういった想いが嫉妬混じりで生じる作品だったので、僕にとっては、至極自然な決断でした。

今思えば、その本の原稿は、導かれるように東京天狼院のこたつの上に置かれました。
このときしかないタイミングで、僕の手に託されました。

やはり、「秘本」はなるべくしてなるのだと、僕はなかば客観的にそう思いました。

ということで、「5代目天狼院秘本」、お待たせしました。
通販での販売開始でございます。

今回も、以下の条件を承諾していただける方にのみお譲りいたします。

・タイトル秘密です。
・返品はできません。
・ほかの人には教えないでください。


ぜひ、この機会に手に取り、読んでいただければと思います。

できれば、お風呂の中で。
すくなくとも、ハンカチを片手に。

いや、タオルじゃないとおさまらないかも知れませんが。



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*送料をいただく代わりに、天狼院書店(東京天狼院/福岡天狼院)でご利用いただけるドリンクチケット(360円のドリンク割引券)をおつけします。
*お客様都合による返品は致しかねますのでご了承ください。

  • 1,404円(税込)